電子書籍云々の覚書

出版社はレコード会社や放送事業者と違い、著作隣接権を持たない。放送事業者およびレコード会社は、隣接権で個別に設定された公衆送信権を保持するため、違法アップロードの取り締まりを単独で判断し行うことが出来るが、出版社の場合は著者が権利を持っているためそれが出来ない。故に、権利者に個別に確認を取る必要があるか、そもそも削除要請を権利者に行ってもらうしかない。
違法ダウンロードこと、違法にアップロードされた著作物の複製(録音録画)に関しては、録音録画とあるように画像、文章は該当しない。故に、コミック、画集、小説等の活字作品は対象とならない。
また、元々出版社が持つ出版権は、頒布目的の複製のみを定義している。(販売や配布等のみを制限)

これらの背景から、印刷物の著作権モラルは一向に向上しないし、取り締まれない現状がある。

出版社、海賊版の取り締まりの為権利強化の要求
著作隣接権が具体例として上がる
著作隣接権が提案されたが、ネット界隈からは二次創作に影響が出るのではと猛反発
国、電子コンテンツ拡充をもくろみ、海賊版の排除に力を入れる。出版社と方向性が合致。
文化庁、で電子出版権の案が出される。日本ペンクラブ反対。一方福井健策はじめとする知財識者は賛成。
2014年4月28日改正案成立。施行は15年1月1日から。
電子出版権と一口に言うが、従来の出版権は印刷、化学的または機械的複製に限る(トレースに関しては含まないと言うことか)だったが、コンピュータを用いて電子的に複製すること、CD-R等に複製することも対象になった。また、電子データとして複製したものを公衆送信する権利を有することとなり、念願だった海賊版を取り締まる力を得たといえる。また、電子書籍販売サイトも出版権を得る事が出来る形になった。
6月末、TSUTAYAを展開するCCCがBookLive!(大株主凸版)と提携合意したことを発表
2014年9月30日、12月1日からBookLive!でTポイント導入の告知

以下、参考資料。

http://kenakamatsu.tumblr.com/post/19395239269/rinsetsu ←赤松先生
https://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201209/jpaapatent201209_066-073.pdf文化庁
https://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201209/jpaapatent201209_066-073.pdf ←日本弁護士会資料
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20130404_594591.htmlINTERNET Watch 福井弁護士ら提案
http://www.japanpen.or.jp/statement/2013/post_444.html ←日本ペンクラブ反対声明文
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20140306_638413.html ←INTERNETWatch 改正案国会提出(バックグラウンド記述)
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/26_houkaisei.html ←文化庁改正概要

以上参考資料。

ここから導き出せることは、CCCがBookLive!との提携を合意できたのも、そのサービスがユーザーに多大な恩恵を与えかつ出版社側に特段メリットが無く、交渉がこれからであるにもかかわらず、プレスリリースを行ったのは、出版社への説得材料として、電子版の出版権が関わっていることは間違いない。
出版社側が力を得たことで、電子版へ乗り出す腰の重さがぐっと減ったのだ。
また、提携予定のサービスは業界初(であるはず)なので、覇権を取って一人勝ちを狙うかもしれない。最初から出版社側に有利なロイヤリティを組んでおけば、出版社側はこれになびく可能性もあるのではないか。(KindleiTunes
更に、邪推ではあると思うが、出版社側とすれば、みだりに出版権を付与される企業が多くなることは望まないはずだ。(例えばマガジンが電子サービス開始して、ジャンプのコンテンツを自社で販売したいとか言ったら突っぱねたい)
そういう場合を見越して、既に拡充したサービスを構想しているプラットフォームに参入し、覇権をとって囲い込みをしよう、という腹があるかもしれない。


しかし、日本ペンクラブの指摘する、サービス終了後の閲覧の不可は問題だ。電子出版権を否定するには強引な理屈だと思うが、電子書籍の拡充を狙うなら、それらの問題には対処すべきなのではないか。

一応、改善案としてはいくつか考えられる。

1、ネット通信が必要なDRMは廃止する(DMM等)→PDFによるDRMフリーな電子書籍の拡充→しかし、コピーが容易すぎるのでは
2、各企業共通のフォーマットおよびリーダーを新規で設定→これならサービスが終了してもその後もリーダーアプリの更新も期待できる。DRMは購入情報は何かしらの形で残しておく(TSUTAYAのTポイントカードやマイナンバー法案に基づくなどデータベースへの照会)ことが出来ればあってもいいのでは。(照会先は複数あり、それを自動で探すなら便利かなと)→しかし現時点では不可能に近い、今後各企業および政府の課題

自炊代行に関しては、逆に電子書籍販売サイト自身または提携した自炊代行業者が自炊、その後自社のリーダーで閲覧できるファイル形式で依頼者へ提供、という形でどうだろうか。(これにより公衆送信目的で自炊することは阻止できる)しかし、間接侵害の問題をクリアしないとそれは無理な話である。アホくさ。カラオケ法理は判例としては老害である場合も散見されるので何とかして欲しい。(録画ネット、まねきTV)