義務と任意とインターネット

最近音楽業界がどうたらこうたらとか、著作権がどうたらとかいう日記をちょくちょく書いているけれど、それらについて調べる過程で、何度も思ったことがある。

例えば、現役で入学した大学1年生が、SNSで「飲み会行きました!ビールって思っていたより苦い^^;」と書き込んだとする。あなたはそれを、晒し上げしたり、憤怒の対象にするだろうか。
少なくとも俺はしない。そりゃおおっぴらで言うのは正直「あーあ、馬鹿が居るよ」と感じるが、法律に違反することなんてそんな珍しいことではない。男性諸君なら、尿意に耐え切れずどこかで立小便をしたなんて事は、人生で一度はあるであろう。それと同じようなもんだ。

だが、パブリックな場所でそれを言った瞬間、集中砲火される。ようく考えれば変な話であるが、まぁこれに関してはそれこそウェブは馬鹿と暇人のものでも呼んでくれと思うので割愛。

俺が思うのは、この「本来やっちゃいけないことだけど、そこまでとがめられることか?」という事案に対しての、人々の反応の違いによって起こる弊害である。
その代表的な例として、著作権について触れたいのである。

10月1日以降、インターネットユーザーの著作権に対する考え方というのは確かに変わったと感じる。
少しでもアウトなにおいのする動画のコメント欄に「通報しました」の文字、「割れ厨m9(^Д^)プギャー」などの煽り。
確かに、著作権を軽視する人間への監視はよりいっそう強まったであろう。しかし、これって良い方向への変化なのだろうか?私はそうは思わない。
そしてそれらに関係して不安なのは、権利者の行動だ。
著作権に抵触している内容でも、権利者があえて見逃している事例、というのはたくさんある。いや勿論、これじゃあ製品や本放送を購入、視聴する必要がないじゃん、と言うものまで擁護する気はないが。
しかし、上記のような歪んだ監視の強まりが横行すれば、将来的には、権利者はボーダーラインの間に存在するグレーゾーンというのを、あまり行使することが出来なくなってしまうのではないだろうか。

権利者側としてもなぁなぁで済ませたいところを、ユーザー側が「こう言うのありましたけどいいんですか!」のような通達が腐るほど来て見ると、権利者としても回等に非常に困るだろう。(現状と同じく無視をしてグレーゾーンを保てばいい話だが)
それに、権利者と一口に言っても難しい。例えばCDの音源の場合、演奏者、レコード会社、歌唱者など、隣接権を持つ権利者が居る上で、作詞作曲の人間が居て、非常に権利者は多い。つまり、こういったこと全員の合意を取るのは難しいし、スタンスがケースによって違うわけなのだ。その上、商業的な作品の位置というのは、時と場合によって大きく変わるし、一概に何でもかんでも通報すればいいってもんじゃあない。

だが、親告罪とはいえ刑事罰が付いた今、一つの作品を見ても多数が居る権利者は、それらを皆々穏便に行使するだろうか。時には多数の意見が寄せられたり、またはパブリックな場所で、しかも集団で署名のような形にして著作権に抵触するコンテンツを通報された場合、それは権利者はだんまりのままでいられるだろうか。

先述の通り、10月1日以降、著作権への考え方は着々と変わってきているが、上記のことを踏まえると、それはやはりいいものとも言いがたい。
今までは権利者が「任意」で行使できた権利を、今度からは「義務」として使わなければいけない、という事案が出てこないか、(杞憂かもしれないが)ちょっと心配なのだ。
そして、これはまだ通報の対象が動画運営や権利者だからいいものの、仮に親告罪な現状から、非親告罪かされたら、警察がどう動くか……いやまぁ未成年がネット上でビール飲んだって言ったからって警察が確実に動くわけじゃないからやっぱり杞憂だとは思うけど……
歪んだ正義感を持った(暇な)ネットユーザーが多い今を見ていると、杞憂だと思いつつちょっと不安になる俺なのであった。