音楽業界について思うこと覚書

俺の音楽業界(特に配信サイトや違法ダウンロードの話)についての過去のエントリーは以下の四つ。

くたばれ音楽業界
がんばれ音楽業界
がんばってるな音楽業界
音楽とどう付き合っていく?

先日、友人と差しで飯を食っていたんですが、途中から音楽の話で盛り上がり、果てはカラオケの印税、そしてアーティストの収入、CD印税と言った話へ変わっていきました。
んまあ、要は、そういった話をしたので、久々に音楽について思うところをまとめておきたいない、と思った次第で今回のエントリーは書いています。

とりあえず今回まとめておきたいのは、

一、音楽の権利者とは
二、音楽のお金の流れ、印税とは
三、違法ダウンロードとは、その問題点
四、音楽を売る側への俺の意見

以上四つとなります。過去のエントリーと重なる部分はありますが、今回はよりまとめの毛色を強くする意味でも、あえて気にせず書いていきます。

一、音楽の権利者とは
音楽ってざっくり言いましたが、具体的にいえば、CDに関わる権利の話です。
CDは、作詞作曲され、アレンジされ、演奏され、歌われ、それが録音され、レコード会社を通じて販売されます。
これらの行程に関わる人々は、
・作詞家
・作曲家
・編曲家
・楽器演奏者
・歌唱者
・レコード会社
とまあこんな所ですよね。
で、上記に上げた人々は、皆権利を持っています。
作詞家、作曲家は著作権、編曲家も著作権を持ちますが、定義上メロディに色づけした二次的なものとされています。楽器演奏者、歌唱者、レコード会社は著作隣接権保有します。
著作権とは、著作物を作った際に自動的に発生する権利で、作った当人か、または譲渡や相続された人が持つ権利となります。
著作隣接権は、著作物を直接作ったわけではなくとも、それが世に出る際に大きく関わった人に付与される権利です。これらは実演家、レコード製作者、放送事業者(+有線放送事業者)がそれぞれ持つ権利となります。

二、音楽のお金の流れ、印税とは
さて、ざっくり権利について説明したところで、お金の話。
基本的に著作権や隣接権を持つ人々は、『勝手に使われない』権利を持っています。作詞家なら勝手に歌詞を使われない権利、レコード会社だったら勝手にレコードを作られない権利、といった感じで。
これらの権利を持つ人は、基本的に『使わせる際に得る対価』を受け取り、お金にするわけですね。
そのお金が、著作権使用料と呼ばれるものであり、通称印税なわけです。
なので、お金が入るのは、CDの場合は一で挙げた全て、カラオケの場合は作詞作曲家、場合によっては編曲家。(編曲はそもそも印税のような、使用される度にお金が入るのではなく、制作過程で発注されたものを受注し、その成功報酬のような形でまとまったお金を払う場合が多い為)
CDの値段はは、これらの印税のほか、ジャケット制作、CDそのものの製造コスト、流通費、それプラス小売に掛かるお金などを考えて決定されるわけですね。
ただ、彼らは一一楽曲やCD音源を使いたい人と交渉をするのではなく、権利管理団体にそういった手続きを委託し、彼らが計算して配分したお金を受け取っています。で、その権利団体の最たる例がJASRACなわけです。よく守銭奴と揶揄される彼らですが、システム自体は合理的で、包括契約によって楽曲が使いやすくなるのもメリットはと思います。ただ、徴収に意欲ありまくりだし、かつピンハネしてるから嫌われているんでしょうけど。ここら辺はホント日本ユニセフ協会と同じ嫌われ方なんじゃないかなあ。
ちなみに、一体どれくらいのお金が流れるか、調べてみようと思ったんですけど、資料見るのだるくてあきらめました。詳しくはJASRACが公開している資料をご参照ください。

三、違法ダウンロードとは、その問題点
いきなり飛んで違法ダウンロードへ。違法ダウンロードとはそもそもなにかと言えば、『違法にアップロードされたコンテンツを、それと知りながらダウンロードすること』を指します。まあぶっちゃけ、違法“ダウンロード”とはいいますが、ダウンロードではなく、録画や録音でも同じことなので、ここはくれぐれも誤解なきように。
そもそも、なんで違法ダウンロードがネットユーザーの間で騒がれているのか。そもそも、インターネット上にあるファイルをダウンロードすることは、著作権法で認められる“私的複製”の範疇と見られてきました。しかし、音楽業界や民放連等が国会に働きかけ、著作権法を、今でいう違法ダウンロードがされにくいように手を打った結果、違法ダウンロードと言う言葉が出来ちゃったわけですね。だって、以前は違法じゃなかったのですから。
また、かつては違法ダウンロードは罰則はなく、そういう意味では刑事罰ではなく民事訴訟のリスクしかなかったわけです。しかし、一昨年十一月より罰則が導入、これにより、違法ダウンロードによって逮捕歴がついてしまうリスクがついたわけですが。ただし、これは有償著作物、つまりCD、DVDといったソフト化されているものや、有料配信されているコンテンツが対象となります。よって、テレビ放送はしたけれどソフト化、有料配信はまだ、という場合は、違法にアップロードされているものをダウンロードしても、権利者と裁判はしてもお巡りさんのターゲットにはならない事になりますね。ま、だからどうだって話ですけど。
まあ、ぶっちゃけ法の抜け穴とかはどうでもいいんです。ここで大事なのが、違法ダウンロードの対象が、音楽、映像であるとこ。書籍や画像は違うんですねこれが。何故そこに違いがあるか。
ここで先述の『隣接権』が関わってきます。レコード会社やテレビ局と違い、出版社は著作隣接権を有しません。著作隣接権には、インターネット上に違法にアップされる際に引っかかる「送信可能化権」が、実演家やレコード製作者、放送事業者全て共通の権利としてあります。しかし、出版社にはこれがなく、送信可能化権を持つ作者に確認し、違法アップロードに対して代理人として取り締まるわけですね。一方、レコード会社やテレビ局は、著作権者に確認することなく、削除依頼をポンポン出す事が出来ます。
で、違法ダウンロードの場合は、著作権著作隣接権の「複製権」の侵害に当たるわけですね。ユーザー視点から言えば、複製権侵害の例外とされていた私的複製に例外を加えたって感じですね。つまり、さっきの流れで行けば、隣接権者は、違法ダウンロードした人間を、著作権者に確認することなく、バンバン訴訟、刑事罰化後では親告することが出来ます。そして、ここがホントに大事。
一つここで確認したいのが、違法ダウンロードの対象は、音楽と映像であったこと、そして要請を音楽、テレビ業界が出していたこと。
腑に落ちないんですよ、ここ。例えば、音楽の場合、作詞家や作曲家、アーティストは「別にモノホンのファンは円盤買うから構わん」と思っていても、レコード会社の意思でバンバン消されるわけで。でもその癖レコード会社はCD売れなくなるのが怖いから、公式無料配信なんてしない場合もあるでしょうし、そもそも有料配信していてもガチガチのコピーガード付だった時代もあるので、何というかまあ、ユーザーにとっては面倒なことこの上ないし、アーティストや著作権者の意向はガン無視である場合が考えられるし、実際あるわけで。
よく、違法ダウンロードの問題として、メールに違法アップロードされたファイルのURLを貼って踏ませるだとか、知らない間に違法ダウンロードさせるようなウィルスが出るかもしれないだとか、どっかの児ポ法騒ぎの時と同じような意見も見かけましたし、よく知らないでダウンロードしている奴も多いって意見も見かけましたが、俺にとっちゃ問題ではあります。が、俺が大前提として問題にしたいのはコンテンツ流通においてレコード会社、テレビ局の力高くなりすぎる危険性”です。レコード会社やテレビ局がユーザーガン無視で売ろうとするなら、これ以上にユーザーにとって不都合なことはないわけですから。
実害にばかり目が行きますが、ダビング10、CPRMなどのようなDRM(Digital Right Management、電子著作権管理、要はコピーガードとかの類)によってじわじわとユーザーに不便になること、それによってコンテンツが不興になること、結果権利者もまき沿いになり業界が失速すること。これが俺は本当に怖いわけですよ。

四、音楽を売る側への俺の意見
最初にリンクした四つのエントリーを見た方はわかると思いますが、音楽配信サイトは、以前と比べ着々と使いやすくなってきました。DRMフリー化により、先述の不都合は大分解けました。これで、購入した人間が閉塞感を感じることは、まずないでしょう。
しかし、まだ問題点はあります。
それはサービスを利用するまでの障壁の除去です。
最初に言っていた友人とこんな会話をしました。
「配信サイトはミーハーしか買わねぇよ」
「確かになぁ。昔はミーハーが買ったけど、今じゃYoutubeとかで聞けちゃうし、まだ配信サイト使うだけましな位だよ」
そう、つまり、俺が以前からライト層(=ミーハー)を取り込むことの重要性を説いていましたが、友人から見ても、CDを買うのはもはやある程度のファンじゃないと敷居が高いと感じているわけですね。
だからこそ大事になるのが、障壁の除去、つまり取っつき易さです。サービスは使いやすくなった、では何が障壁となるか。それは決済方法です。
例えばレコチョクプリペイドカードがセブンイレブンなどで販売されるようになり、ちょっとだけ取っつき易くなりました。しかし、以前書いたように、“そのサービス専用のプリペイドカードは、余程欲しい曲がなければわざわざ買う気が起こらない”という問題点があります。で、ぶっじゃけてしまえば、よっほど欲しい曲なら(金に余裕があれば)CD買う訳ですし、同じ曲買われる点でいえばレコード会社やアーティストにしては変わらないかもしれないものの、配信サイト運営側としては、あんまりうまい話ではないはずです。
解決に手っ取り早いのは電子マネーへの対応です。ビットキャッシュやEdy、欲を言えばスイカ等のプリペイド電子マネー決済に対応することは敷居を下げることに効果があると思います。クレジットカードを持っていればそんな心配はいらないのですが、クレジットカードで買い物するのに抵抗感がある人は今も見かけますし、俺のような学生は持っていないケースが非常に多い。一方、iPhoneでも使っていない限り、または簡単ケータイでも使ってない限り、おサイフケータイ機能がついているので、電子マネーの導入は非常に楽なはず。
つまり、電子マネーの存在の周知と、それに対応することで、より配信サイトを使われる機会を多くできると考えられます。
これは、AmazonMP3やiTunesといった海外企業に対し、moraやレコチョク、music.jp(ListenJapanとサービス統合)といった日本企業の配信サイトが使われるチャンスを作ることにもつながります。AmazonMP3はAmazonギフト、iTunesストアもそれ専用のカードが必要な訳ですから、そこで差をつける事が出来るわけですね。
また、ダウンロード専用ソフトを毎回ダウンロードさせるのも地味にやめてほしい所です。技術的にどうなのかはわかりませんが、出来るだけブラウザでダウンロードボタンを押しただけで済むような仕様の方が、正直ありがたい限りです。容量とらないとわかっていても、同じようなソフトが二つも三つも入るのはあまり気分が良くないので。

ただ、逆に「すげー!」って思ったところもあります。それはハイレゾ音源”の配信です。ハイレゾ音源とは、波形情報である音楽をデジタルデータとして保存する際、サンプリング、量子化と言った、電子化する際の、なんつーんだろ、処理があります。ハイレゾハイレゾリューションの略で、高解像度を意味します。
分かり易い例でいうと、スキャナを考えてもらえればと思います。スキャナの読み込み解像度が低いと、拡大したときに粗く見えますよね。でも、高解像度だとより滑らかできめ細かい。
音楽もそれと同じような事がいえるわけです。ハイレゾ音源は、要は取り込むときにより解像度が高い、そういうことです。
これ、どれくらい高いかと言えば、CD音源より高いというのだからマジで驚き。ハイレゾを謳っていれば、大抵はCDの三倍の容量を持つといいます。(CDが44.1kHzで16bit、ハイレゾが44.1kHz以上、24bit)
いやそもそも、CDよりも音質がいいなんて、もう、それこそ配信サイトだからできること!(もっと言えばそれを実現させるネットインフラが整備されていること)
しかも、ほかの楽曲と同じように一曲当たり二百五十円程で売られているんですから、もう、これは是非とも武器にしていって欲しいと思います。調べてみると、サウンドトラックの曲でハイレゾ音源があったりもして、これはファンにはたまらない内容なんじゃないかなと思います。
今の所俺が欲しいと思うものはないですが、俺の好きなアーティストや作曲家の曲があれば、手が伸びちゃうと思います。耳コピDTM始めてから、無駄にイヤホンに拘ったりする音質厨的なあれになってきたので仕方ないね。
ちなみに、ハイレゾ配信しているのは、今の所メジャーな配信サイトではmoramusic.jpだけのようなので、先述のように是非ともAmazonMP3やiTunesに負けずにシェアを拡大して欲しい所です。(ちなみにオンキョーの運営する音楽配信サイト、e-onkyo真っ先にハイレゾに取り組んだようですね。俺今日まで存在知りませんでした。)

さて、大分長々と書いてしまいましたが、俺が言いたいのは結局、配信サイトはせっかく武器を持っているんだから、それを活かせる土台を作り、CDが売れない時代でも音楽業界が活性化するために一役買って欲しいと言うことです。その一環として、俺が利用しやすいサービスになるはずですしね!全員ハッピーだよ!
そういう訳でがんばれ音楽業界。
がんばれ音楽業界。